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頼れるかかりつけ医の効率的な診療 ~日経新聞記事~

みなさま、寿都勤務の中川です。
アップが遅くなりましたが、寿都診療所が日経新聞の「蘇れ医療」に掲載されましたのでご一読お願いします。

家庭医療、地域医療が今後の医療において何らかの役割を果たせるのではと個人的には確信しております。



以下、日経新聞2009.3.27から引用・・・

蘇れ医療 第5部  揺らぐ安全網
頼れる「かかりつけ医」 効率的な診療 実現の要

過疎と高齢者に直面する北海道の寿都町。約三千六百人の町民が頼りにするのが町立診療所で働く四人の「家庭医」だ。
 「お子さんの骨はズレていないから、手術をしなくても治るよ。このまま様子をみましょう」。所長の中川貴史(32)が話しかけると、こわばっていた母親の顔から笑みがこぼれた。高血圧の女性には体調を尋ね降圧剤を処方。高齢者の中耳炎も治療した。

「無駄な薬省けた」

 いわば「医師の何でも屋」。がんなどが疑われ精密検査や手術が必要な場合には専門医や大学病院を紹介。その判断を的確に下す訓練も積んでいる。
 設立は四年前。厳しい財政状況が続くなか、町は同じ場所にあった赤字続きの道立病院を道から「(引き受けないのなら)休止もあり得る」と迫られ、診療所に転換する決断をした。
 六十床あったベット数を十九床に減らし「大丈夫なのか」という町民の不安を招いた。選んだのは国内では珍しい家庭医料の専門医チームを招く試みだった。
 何でも診てくれる便利さから利用者は年々増えている。道の調査では町民の約七割が「道立だったころよりよくなった」と小さな町の大胆な改革を評価する。遠くの大病院に駆け込む前にまず診療所に来る人が増え「無駄な検査や投薬を省くことができた」(中川)。町民一人当たりの医療費は一割減り、町全体でみると九千万円削減できた。
 「かかりつけ医」とも呼ばれる家庭医は欧米では広く定着している。英国ではかかりつけ医に相談してからでないと病院に行くことはできない。
 一方、日本はどの医療機関も自由に受診できる。この「フリーアクセス」は高度な医療をだれもが受けられる反面、かぜのような軽症で大病院が込み合い「重症者が後回しになる」「時間をかけて診療してもらえない」などの弊害も生んだ。
 寿都町の試みを全国に普及させるにはフリーアクセスの是非を巡る議論を避けては通れない。日本家庭医療学会代表理事の山田隆司(54)は限られた資源を効果的に分配するには、国内でも家庭医の存在が鍵を握る」と話す。

受診制限が利益に

 効率分配に向けた取り組みは命にかかわる救急現場では待ったなしの状況だ。
 兵庫県伊丹市で一月、交通事故に遭った男性が救急搬送の受け入れ先が見つからず、十四病院に断られ死亡した。一方で救急車を利用する人の五八%が軽症患者であることが市の調査でわかった。必ずしも救急医療が必要でない患者が現場に負担をかけ、必要な人に医療が届かない現実・・・・・・。
 「必ず医療機関に搬送してもらえる」に次ぎ「どこに受診したらいいか分からなかった」との回答が多かった。相談先の不在が安易な一一九番に向かわせる。
 市は昨年七月、医療相談サービスのティーペック(東京)に委託し二十四時間無料相談に応じる電話サービスを始めた。半年で九千二百件の問い合わせがあり「子どもの急病について聞きたい」などの相談が多かったという。市の担当の後北桂子(50)は「軽症者の受け皿になった」と話す。
 北海道大教授の前沢政次(61)も「家庭医や看護師が気軽に相談に乗る仕組みを築けば、ゆるやかなフリーアクセス制限は可能。最後は患者のためにもなる」と指摘する。
 金融危機に端を発した今回の不況は命の安全網のひずみをいくつも浮き上がらせた。苦境をばねに課題を一つずつ解決すれば蘇る余地は十分ある。(敬称略)
by hcfm | 2009-05-21 23:00 | スタッフ
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家庭医療の実践・教育・発展に貢献するためのブログ


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