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Journal Club ~プレホスピタルで高流量酸素のCOPD患者の死亡率への影響~

【文献】
Effect of high flow oxygen on mortality in chronic obstructive pulmonary disease patients in prehospital setting: randomised controlled trial; BMJ 2010;341:c5462
【この文献を選んだ背景】
先日、COPDの急性増悪で来院された患者がいた。以前にも、COPDの患者を外来で診察していて、何度か急性増悪を経験していたが、その際の酸素投与量に関してのエビデンスを見つけたので読んでみた。
【要約】
《目的》
COPDの急性増悪の際に、プレホスピタルで標準的な高流量酸素療法(A)と徐々に酸素を増やす治療(B)とを比較した。
《方法》
クラスターランダム化比較試験。研究期間中にRoyal Hobart Hospitalに入院したCOPD急性増悪の患者で、救急救命士の治療を受けていた405名を対象とした。
(A)は酸素マスクで8-10L/分投与
(B)は経鼻カニュラでSpO2が88-92%となるように投与
《結果》
 患者数   (A)226名 (B)179名
 COPD患者数(A)117名 (B)97名
 全死亡率  (A)9%(21名) (B)4%(7名)
 COPD患者の死亡率(A)9%(11名) (B)2%(2名)
 全患者    Relative risk 0.42 (95%信頼区間 0.20-0.89; P=0.02)
 COPD患者  Relative risk 0.22 (95%信頼区間 0.05-0.91; P=0.04)
《結論》
この結果から、プレホスピタルではCOPDの急性増悪患者や息切れの患者には(B)の酸素投与法をルーチンで行うことを推奨する。
【考察とディスカッション】
・ 息切れなどがあり、救急搬送されてくる患者は酸素10L/分で来院されることがほとんどであるが、これはそれが患者に害を及ぼしていることを示唆する結果であり、注目に値する。
・ 今後、自らの関わる救急隊に情報を提供し、行動変容を促す必要がある。
以下、全体での議論
現時点ではプレホスピタルにおける酸素投与に関しては「more is better」という文化が定着している。
まだまだエビデンスの少ない分野であり、今後の動向に注意が必要だろう。
文献のセッティングは都市部のクリニックが初診の呼吸困難の患者を病院に搬送する場合とそう変わりはなく、応用は可能かも知れない。

【担当者】
八藤英典(北星ファミリークリニック)
【開催日】
2010年11月10日(水)
by hcfm | 2010-11-10 11:54 | Journal Club
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